担当者が変わっても、
同じキャラクターとして伝わる。
企業キャラクターをWeb、SNS、営業資料、グッズへ展開すると、制作する人や媒体が増えていきます。そのたびに色や顔つきが変わると、同じキャラクターでも印象がばらついてしまいます。
デザインガイドラインは、キャラクターの見た目をそろえ、制作時の判断を助ける資料です。この記事では、最初に決める項目、具体的なルールの書き方、素材の渡し方、更新方法を紹介します。
企業キャラクターのデザインガイドラインとは
企業キャラクターのデザインガイドラインとは、基本形、色、表情、配置、使用例などをまとめた制作・利用のための資料です。「かわいらしく使ってください」といった抽象的な依頼を、確認できる基準へ置き換えます。
資料の目的は、制作担当者を細かく縛ることだけではありません。どの素材を使い、どこまで変更できるかを明確にして、毎回同じ確認を繰り返さずに済む状態を作ることです。
見た目をそろえる
部署や制作会社が変わっても、顔、色、形などの主要な特徴を共通の基準で確認できます。
確認の往復を減らす
使ってよい素材と避けたい例を示し、制作後の大きな差し戻しを減らしやすくします。
活用を続けやすくする
新しい媒体やポーズを追加するときも、既存の基準を出発点にして検討できます。
設定資料や運用体制との違い
キャラクターの性格、話し方、背景の物語は設定資料で整理し、デザインガイドラインには見た目に関わる基準を中心にまとめます。表情と性格の関係など、両方にまたがる項目は参照先をそろえましょう。
利用申請や素材管理を担当する組織・窓口の設計は、キャラクターIP事務局の役割と立ち上げ方で紹介しています。本記事では、制作する人が参照するデザイン資料に焦点を当てます。
デザインガイドラインに入れたい8つの項目
最初から大部の資料にする必要はありません。現在予定している使い方で困らない項目から作り、実際の制作で必要になった内容を追加します。
| 項目 | 決める内容 | 用意する見本 |
|---|---|---|
| 基本形 | 輪郭、体の比率、目や口の位置、特徴的なパーツ | 基準となる正面図、必要に応じて側面・背面図 |
| 色指定 | 本体、顔、装飾などの色と用途別データ | 色見本と数値、承認済みの配色 |
| 表情・ポーズ | 使用できる表情、動作、変更してはいけない特徴 | 基本表情、案内・喜びなどの用途別ポーズ |
| 余白・最小サイズ | 周囲に確保する空間と、小さく使う際の限界 | 余白の図、実寸・画面サイズでの使用見本 |
| 背景・配置 | 写真への重ね方、ロゴとの距離、切り抜きの可否 | 明るい背景、暗い背景、写真上での例 |
| 禁止・要確認の例 | 変形、色変更、反転、装飾追加などの扱い | 理由を添えた使用不可・要確認の例 |
| 媒体別の使用例 | SNS、Web、資料、印刷物などへの展開 | 実際に使うサイズに近い完成イメージ |
| 素材と更新情報 | 配布データ、保存場所、版数、確認窓口 | ファイル一覧と更新履歴 |
スマートフォンでは表を横にスクロールできます。項目は運用設計の例であり、すべてのキャラクターに共通する必須仕様ではありません。
デザインの基準と、利用できる範囲は分けて確認する
見た目がガイドラインどおりでも、予定する媒体や用途で利用できるかは別の確認です。制作元や権利管理の窓口と、利用範囲、改変、外部への素材共有などの条件を確認し、参照先を資料に記載しましょう。
形・色・余白は、実際の使用場面で決める
基本形は「そのキャラクターらしさ」が分かるようにする
顔の形、目と口の間隔、耳やしっぽ、模様など、印象を決める特徴を整理します。基準図に説明を添え、どこを維持する必要があるかを示してください。
正面のイラストしかない状態で側面や背面を外注先に任せると、担当者ごとに解釈が分かれることがあります。動画や立体物など、別の角度を使う予定がある場合は、必要な向きも先に作成します。
色は、画面用と印刷用を整理する
WebやSNSで使う色と、印刷で再現する色は、同じ見え方になるとは限りません。画面用にはRGB値やHEX、印刷用には出力条件に合わせたCMYK値や特色の指定などを整理します。
数値を機械的に変換するだけで確定せず、印刷会社やデザイナーと実際の仕上がりを確認しましょう。Adobeの公式資料でも、RGBの一部の色はCMYKの印刷で正確に再現できないことが説明されています。
余白は、何を基準に測るかまで指定する
「少し余白を空ける」では、見る人によって判断が変わります。キャラクターの頭の幅など、図の中で分かる長さを基準にし、周囲に必要な余白を示す方法があります。
影や持ち物を含めて測るか、キャラクター本体だけを基準にするかも明記します。ロゴや文章に近づける場合の例を添えると、制作時に使いやすくなります。
最小サイズは、見本を縮小して決める
大きな画面できれいに見えても、SNSの小さなアイコンや印刷物の隅では、目や口がつぶれることがあります。使用予定のサイズで表示・出力し、表情や特徴が識別できるかを確認してください。
画面用と印刷用は別に検証します。小さく使うときに簡略版が必要なら、担当者がその都度省略するのではなく、承認済みの専用データを用意しましょう。
反転や切り抜きは、キャラクターごとに判断する
左右で模様が異なるキャラクターは、反転すると特徴が変わります。また、顔だけを切り抜く使い方が適していても、全身の途中で不自然に切ると見え方が崩れる場合があります。
反転やトリミングを一律に許可・禁止するのではなく、どの素材をどの範囲で使えるかを見本付きで示しましょう。
ルールは「判断できる文章」と「使用例」で伝える
ガイドラインは、制作担当者が迷ったときに判断する資料です。抽象的な印象だけでなく、対象、変更の可否、例外時の連絡先を具体的に記載します。
かわいらしさを保って使う
色や形を大きく変えず、適度に余白を空けて配置してください。
基本形と指定データを維持する
輪郭、目の間隔、腹部の模様は変更しません。掲載する媒体に合う配布データを使用し、余白は配置見本に従います。新しい表情は制作前に確認してください。
ルール整理シートの記入例
以下は、架空の鳥のキャラクターを想定した記入例です。実際のキャラクターや契約条件に合わせて内容を決めてください。
基本形を保ちながら、使用場面を広げるためのルール
- 変えない部分
- 頭の飾り、丸い輪郭、白い腹部、くちばしの基本形。
- 色
- 本体・くちばし・輪郭は、配布された媒体別の色指定を使う。担当者の判断で色を置き換えない。
- 表情
- 通常、喜び、案内の承認済み素材を使う。新しい表情はラフ段階で確認する。
- 反転
- この作例では配布データの反転を認めない。向きを変えたい場合は、対応する別素材を申請する。
- 背景
- 輪郭と表情が見分けられる背景を選ぶ。写真に重ねる場合は完成状態を確認する。
- 追加装飾
- 帽子や持ち物を追加する場合は、使用目的と完成予定のラフを窓口へ共有する。
- 例外の扱い
- 承認された媒体・期間・デザインを記録し、別の案件へ自動的に流用しない。
禁止例には、理由と代替方法を添える
禁止マークだけを並べると、制作担当者は代わりにどうすればよいか分かりません。「縦横比を変えない」の隣に「枠に合わない場合は、承認済みの顔アップ素材を使う」といった代替案を添えます。
| 避けたい使い方 | 理由 | 代替方法の例 |
|---|---|---|
| 縦横を別々に拡大する | 体の比率や顔つきが変わる | 縦横比を保ち、周囲のレイアウトを調整する |
| 背景に合わせて本体色を変える | キャラクターの識別色が変わる | 背景を変更するか、承認済みの別仕様を使う |
| 小さくなった顔を描き直す | 担当者ごとに表情が変わる | 小サイズ用の専用素材を用意する |
| 未承認の持ち物を追加する | キャラクターの設定や用途との確認が必要になる | 使用目的とラフを提出して判断を受ける |
上記はルール設計の例です。実際の可否は、自社のキャラクターごとに決定してください。
デザインガイドラインを作る5つの手順
-
使う媒体と担当者を洗い出す。
Web、SNS、営業資料、印刷物、動画など、実際に予定している使い方を整理します。 -
基準となるデザインを確定する。
複数の案や過去素材がある場合は、どれが正式な基本形かを決めます。 -
形・色・配置・禁止例をまとめる。
判断に迷う項目を、文章と見本の両方で説明します。 -
実際の制作物で試す。
SNS画像や資料の表紙などを作り、ルールだけで迷わず制作できるかを確認します。 -
素材・確認先・更新履歴と一緒に共有する。
ガイドラインを読んだ後、使うデータへたどり着ける状態にします。
外注先には、ガイドラインだけでなく元データも渡す
資料に掲載された小さな画像を、そのまま制作素材として使われないようにしましょう。確認用PDFと制作に使うデータを分け、用途に応じた形式を用意します。
たとえばWeb掲載用の画像、印刷用データ、編集が必要な案件で共有する元データなどを区別します。編集可能なデータを誰に渡せるかも、事前に確認しておきます。
担当者が迷った箇所を、資料の改善に使う
初版の資料だけで、すべての使い方を想定するのは難しいものです。質問があった項目を記録し、繰り返し発生する内容は見本や説明として追加します。
制作担当者の理解不足と決めつける前に、必要な情報が資料にあるか、どのページを見れば分かるかを確認してください。
素材とガイドラインを、同じ版で運用する
ガイドラインだけを更新し、配布素材が古いままだと、正しい手順で制作しても内容が食い違います。資料と素材を一緒に管理し、どの組み合わせを使うかを明確にしましょう。
最新版の保存場所を一か所に決める
共有フォルダには、最新版の資料、使用可能な素材、過去版を分けて保存します。ファイル名に版数や更新日を入れ、古いメールの添付ファイルから制作を始めない運用にします。
変更した内容は、更新日だけでなく「基本色を調整」「小サイズ用素材を追加」などの要点を記録します。過去の制作物を修正する必要があるか、次回制作から適用するかも決めて共有してください。
追加ポーズやAI生成画像も、確認済み素材として管理する
新しいポーズを作成した場合は、顔、模様、体の比率、色を基準資料と照合します。生成AIを使った場合も、似た雰囲気で出力されたことだけで正式素材にしないようにしましょう。
承認されたデータを素材一覧へ追加し、作成方法、確認者、使用条件を記録します。AIを使った制作時の注意点は、生成AIで企業キャラクターを作る際の注意点もあわせてご覧ください。
配布前のチェックリスト
- 正式な基本形と、古いデザインを区別できる
- 変えてはいけない特徴が文章と見本で示されている
- 画面用・印刷用など、用途に応じた色とデータを整理した
- 余白と最小サイズを、実際の使用状態で確認した
- 反転・切り抜き・背景・装飾追加の扱いが分かる
- 禁止例に理由や代替方法が添えられている
- ガイドラインと配布素材の版が一致している
- 追加制作や例外使用の確認先が記載されている
- 利用条件を確認できる資料や窓口が分かる
- 更新履歴と、変更を知らせる相手が決まっている
一度認めた例外を、一般ルールにしない
特定のイベントや媒体だけで認めた使い方は、承認条件と一緒に記録します。別の担当者が過去の制作物を見て、同じ使い方を常に認められていると判断しないようにしましょう。
キャラクターのデザインガイドラインに関するよくある質問
キャラクターが1体だけでも必要ですか?
複数の人や媒体で使う予定があるなら、基本形、色、使用可能な素材、確認先をまとめておくと役立ちます。最初は短い資料でも構いません。実際に使う人が判断できる内容を優先してください。
何ページくらい作ればよいですか?
用途や素材の種類によって異なります。ページ数を目標にせず、現在の制作で必要な項目がそろっているかを確認しましょう。動画、立体物、商品化などへ広げる場合は、それぞれの制作条件に合わせて追加します。
すべての表情やポーズを最初に用意する必要がありますか?
予定している使い方から優先順位を付けられます。通常、案内、喜びなど、よく使う素材を先に作り、追加が必要になったときの確認方法を決めておくと進めやすくなります。
Webと印刷で同じ画像を使ってもよいですか?
形式、解像度、色の条件が合うかを確認する必要があります。Web用の小さな画像をそのまま大きく印刷すると、輪郭が粗くなる場合があります。用途別のデータと、印刷会社が求める入稿条件を確認してください。
制作会社が変わるときは、何を渡せばよいですか?
最新版のガイドライン、使用可能な素材、用途別の使用例、利用条件の参照先、確認窓口をまとめて渡します。制作途中の案と正式素材が混ざらないように整理し、最初の制作物で認識の違いを確認しましょう。
ガイドラインはどのタイミングで更新しますか?
新しい媒体へ展開するとき、表情やポーズを追加するとき、同じ質問や修正が繰り返されるときが見直しの機会です。変更の影響を確認し、資料と素材を同時に更新してください。
ガイドラインは、作る人が迷わず使える状態にする
企業キャラクターのデザインガイドラインでは、基本形、色、余白、表情、使用例を具体的に整理します。ルールだけでなく、使える素材と確認先までまとめることが大切です。
まずは現在の素材と使用予定を確認し、判断が分かれやすい点から基準を作りましょう。実際の制作で出た質問を反映しながら更新すると、キャラクターを継続して活用しやすくなります。
キャラクターを、継続して使える形に整えませんか?
3Bros.worksへ、企業キャラクターの制作や活用についてご相談ください。既存素材や使用予定を伺い、整理したいデザイン基準や運用方法を検討します。