企業のWeb・SNS担当者へ
生成AIで記事やSNS投稿を作ると、下書きの準備は進めやすくなります。一方、数字、商品名、引用、サービスの条件などに誤りがあれば、そのまま公開することはできません。
ファクトチェックでは、文章に含まれる主張を取り出し、根拠となる資料と一つずつ照合します。AIに「正しいですか」と聞き直すだけで終えず、人が参照先と内容を確認する工程を用意しましょう。
この記事では、確認したい項目、事実確認の手順、管理表の例、確認漏れを減らすプロンプトを紹介します。
生成AI文章のファクトチェックとは
生成AI文章のファクトチェックとは、AIが出力した文章に含まれる事実関係を、資料や担当者への確認によって確かめる作業です。誤字脱字を直す校正とは確認する対象が異なります。
たとえば「イベントは10月開催です」という文章は、読みやすくても、開催日が変更されていれば誤りです。「このサービスには無料プランがあります」という説明も、対象地域や契約条件によっては、そのまま掲載できません。
OpenAIは、言語モデルがもっともらしい誤った回答を生成する場合があることを説明しています。文章の流暢さや回答の自信だけを、正確さの根拠にしないことが大切です。
参考:OpenAI:Why language models hallucinate
事実は合っているか
数字、日時、名称、仕様などを、根拠資料と照合します。
条件は抜けていないか
対象者、地域、期間、プランなど、説明が成立する条件を確認します。
根拠までたどれるか
出典が実在し、その資料が文章の主張を裏付けているかを確認します。
出典のページを実際に開き、該当箇所まで確認します。ページが実在しても、本文と異なる条件の説明だったり、引用した数字が見当たらなかったりする場合があります。
公開前に確認したい項目
文章を最初から最後まで読むだけでは、細かな条件の抜けを見落とすことがあります。確認する対象を分類し、重要な情報から順に調べましょう。
| 確認する項目 | 見落としやすい点 | 確認先の例 |
|---|---|---|
| 会社名・商品名・人名 | 表記違い、旧名称、別の企業や人物との混同 | 公式サイト、商品資料、本人・担当部署 |
| 料金・数量・割合 | 税込・税別、単位、対象期間、分母、初期費用の有無 | 料金表、見積書、調査の原資料 |
| 日時・提供状況 | 開催年、終了済みの企画、対象地域、変更後の日程 | 公式告知、運営元、社内の確定資料 |
| 機能・操作方法 | プランや権限による違い、古い画面、利用できない機能 | 公式ヘルプ、実際の管理画面 |
| 引用・出典 | 存在しない資料、引用文の改変、前後の文脈の欠落 | 原文、原著、公開元の資料 |
| 比較・効果の説明 | 比較条件の違い、根拠のない断定、相関と因果の混同 | 調査方法、測定条件、元データ |
| 自社の実績・対応範囲 | 未承認の事例、実際には提供していない業務、古い体制 | 案件記録、営業資料、業務責任者 |
スマートフォンでは表を横にスクロールできます。確認先は例であり、公開内容に応じて選びます。
「最新」「必ず」「すべて」は根拠を確認する
「最新の機能」「必ず改善する」「すべてのプランで利用できる」といった表現は、確認が必要な範囲を広げます。根拠が確認できる期間や条件に絞って説明してください。
単に「可能性があります」と言い換えても、元の主張が正しいことにはなりません。裏付けが見つからない場合は、主張そのものを削除するか、確認が済むまで公開を保留します。
生成AI文章をファクトチェックする5つの手順
STEP 01確認する原稿の版を決める
確認を始める前に、対象原稿の版や更新日時を固定します。途中で別の原稿へ差し替わると、確認済みの箇所と未確認の箇所が混ざります。
記事名、原稿の保存先、確認担当者、公開予定日をまとめておくと、制作担当と確認担当のやり取りが進めやすくなります。
STEP 02確認できる単位に主張を分ける
一文の中に複数の主張がある場合は分けて確認します。たとえば「Aサービスは無料で、全店舗が当日から使えます」には、料金、利用対象、利用開始時期の三つの確認事項があります。
AIを使って数字や固有名詞を含む文章を抽出する方法もあります。ただし、抽出漏れを防ぐため、最後に担当者が元の原稿と照合してください。
STEP 03元の資料を開いて照合する
自社情報は確定した社内資料、外部サービスの仕様は提供元の公式資料、統計は公表元の調査資料など、情報の発信元に近い資料を確認します。
数字が一致するだけでなく、調査対象、集計期間、単位も確認しましょう。同じサービスでも、海外向けの説明と日本向けの提供条件が異なる場合があります。
公式資料でも更新日が古い場合や、別の公式ページと食い違う場合があります。解決しないときは提供元や担当部署へ確認し、都合のよい方だけを採用しないようにします。
STEP 04確認結果に応じて修正する
確認結果は「一致」「修正が必要」「確認できない」などに分けます。誤った数字を直すだけでなく、対象条件が抜けていた場合は、その条件まで本文へ反映してください。
修正で意味が変わった場合は、前後の段落、見出し、画像内の文字、メタ説明にも矛盾が残っていないか確認します。
STEP 05修正版と公開画面を確認する
確認済みの修正版を公開担当へ渡し、公開後はリンク先、数字、表の表示、注記の位置を確認します。正しい原稿でも、入稿時に古い文章を貼り付ければ、公開内容は誤ったままになります。
確認日と参照先を記録しておくと、料金改定やサービス変更があったときに、見直す箇所を探しやすくなります。
確認表に残す内容と記入例
確認表には、出典URLだけでなく「何を確認したか」を残します。長い資料では、ページ番号や見出し名も記録すると、別の担当者が確認を引き継げます。
| 原稿の主張 | 確認した資料・条件 | 判定と対応 |
|---|---|---|
| 月額3,000円で利用できる | 提供元の料金表。税別・年払い時の月額換算と記載 | 修正が必要。税区分と契約条件を本文に追加 |
| 利用者の80%が満足している | 調査の原資料が見つからず、対象者や回答数も不明 | 確認できない。根拠が確認できるまで掲載しない |
| 来月から全国で提供される | 公式告知では開始日と対象地域を限定して案内 | 修正が必要。「来月」を具体的な日付にし、地域を明記 |
実在するサービスの料金・調査結果ではありません。実際の管理表には資料名、URLまたは保存先、確認日、確認者、対象原稿の版も追加してください。
見つからなかった根拠を推測で補ったり、AIの回答を出典として扱ったりすると、同じ誤りが残ります。未確認の主張を一覧にして、削除・追加調査・担当部署への照会のどれで対応するかを決めましょう。
確認項目を整理するためのプロンプト
AIには、最終的な正誤判定を任せる前に、確認対象の整理を手伝ってもらうと使いやすくなります。以下は原稿から主張を取り出すための指示例です。
以下の原稿から、外部資料または社内資料で事実確認が必要な主張を抽出してください。 【抽出する内容】 ・数字、金額、割合、日時 ・会社名、商品名、人名 ・サービスの仕様、対象者、利用条件 ・引用、調査結果、比較、効果を断定する表現 ・自社の実績、提供業務、対応範囲 【出力形式】 1. 原稿内の該当文 2. 確認する主張を一つずつ分けた内容 3. 確認すべき条件 4. 参照先の候補の種類 5. 提供資料だけでは判断できない点 【ルール】 ・提供資料にない数字や根拠を補わない ・実際に確認していないURLや資料名を作らない ・推測を確認済みの事実として扱わない ・該当文は原稿からそのまま抜き出す ・原稿の表現を変更せず、まず確認事項だけを整理する 【原稿】 ここに確認対象の原稿を貼り付ける
原稿を入力する前に、社内のAI利用ルールに沿って、顧客情報や未公開情報を含めてよいか確認してください。必要に応じて固有名詞や内部情報を除いた原稿を使用します。
この指示で抽出された一覧も、完全とは限りません。資料の実在、引用の正確さ、原稿全体との対応は担当者が確認します。
別のAIが同じ回答をしても、それだけでは証明にならない
複数のAIに確認を依頼すると、異なる観点が見つかる場合があります。ただし、同じ誤った情報を参照している可能性もあるため、回答の一致だけで正しいと判断しないようにしましょう。
確認の基準は「何個のAIが賛成したか」ではなく、「主張を裏付ける資料にたどり着けたか」です。
社内でファクトチェックを続けるための運用方法
制作担当と確認担当の役割を決める
制作担当は、原稿と参照資料をそろえて提出します。確認担当は、主張と根拠を照合し、修正理由を残します。公開担当は、承認された版を入稿し、公開後の表示を確認します。
少人数で兼任する場合も、文章を書く時間と確認する時間を分けてください。自社商品の価格や仕様は、情報を持つ部署に確認するルートを決めておくと、判断を一人で抱えずに済みます。
影響の大きい主張から確認する
誤りがあると申し込み条件や購入判断に影響する情報、会社の実績、対外的な説明は優先して確認します。文章の装飾や言い回しを整える前に、重要な事実を確定させましょう。
専門的な判断を含む文章は、必要な知識を持つ担当者の確認も工程に組み込みます。ファクトチェックだけで、表現・権利・公開可否に関する確認をすべて代替できるわけではありません。
変更されやすい情報は公開後も見直す
料金、提供プラン、操作画面、日程などは、確認時点で正しくても後から変わります。情報提供元から変更の告知が出たときや、自社サービスを変更したときに、関連する記事を見直せるようにします。
Googleは、生成AIを使ってWebコンテンツを作成する場合も、正確さ、品質、関連性に重点を置くよう案内しています。公開本数だけでなく、根拠を確認し、更新できる体制まで整えましょう。
参考:Google検索セントラル:生成AIコンテンツに関するガイダンス
公開前の最終チェックリスト
- 原稿の版と確認担当者が決まっている
- 数字・日時・固有名詞を元資料と照合した
- 対象地域・期間・プランなどの条件を確認した
- 引用は原文と前後の文脈まで確認した
- 出典リンクが開き、該当する根拠が見つかる
- 根拠のない比較や効果の断定が残っていない
- 未確認事項の対応が決まっている
- 修正後の本文・表・画像内の説明が一致している
生成AI文章のファクトチェックでよくある質問
AIに「間違いがないか確認して」と頼むだけでは不十分ですか?
その指示だけでは、どの資料を根拠に判断したのか分からない場合があります。確認する主張を分け、参照資料の該当箇所まで照合してください。AIの再回答は、確認の補助として扱います。
すべての文章に出典リンクを付ける必要がありますか?
文章の性質によります。統計、料金、外部サービスの仕様、引用など、読者の判断に関わる事実は根拠が分かる形にします。自社の運用例や説明用の架空例は、そのことを明記し、実績と混同されないようにしてください。
検索結果の要約だけで確認してもよいですか?
要約には条件や前後の文脈が省かれている場合があります。元のページを開き、必要な箇所を読みます。原資料を確認できなければ、確認できた範囲を明確にし、未確認の内容を断定しないようにします。
事実確認が済めば、そのまま公開できますか?
事実が正しいことと、企業として公開してよいことは別の確認事項です。顧客情報、掲載許可、画像や文章の利用条件、社内承認なども、内容に応じて確認してください。
文章のすべてを人が書き直す必要はありますか?
正確で目的に合う箇所まで一律に書き直す必要はありません。誤り、条件の不足、根拠のない説明を直し、読者にとって必要な情報と自社ならではの具体例を整えます。
生成AIの文章は、根拠を確認できる状態で公開する
生成AI文章のファクトチェックでは、主張の抽出、資料との照合、修正、公開前後の確認を順に進めます。自然な言い回しや出典らしいリンクがあることだけで、正しい文章とは判断しないようにしましょう。
まずは次に公開する原稿から、数字・日時・固有名詞・比較表現を抜き出してみてください。何を確認し、何が未確認かを一覧にすることが、公開前の判断を進める第一歩になります。
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